• HOME
  • BLOG
  • 職人さん
  • 「暮らしに土の温もりを」をキャッチコピーにした京都府(株)丸浩工業さんを訪ねました。

BLOG

2025年06月30日

「暮らしに土の温もりを」をキャッチコピーにした京都府(株)丸浩工業さんを訪ねました。

京都府左官業組合連合会会長、京都府左官協同組合理事長であられる村上一博様を訪問しました。

訪問の目的は2つありました。

1つ目は、職人さんのご家族を応援する絵本「絵ことば」活動の紹介です。

2つ目は、村上さんたちが「左官業をつなごう」と開発された荒壁パネルの件です。

(株)丸浩工業 | カタログ案内 |

古都・京都には、次の世代へ大切につないでいかなければならない文化財が数多くあります。

その維持や修復には、熟練の職人の技が欠かせません。

もし職人がいなければ、文化財を守ることも叶わなくなってしまいます。

そんな背景もあり、京都では職人を支えるさまざまな支援や協力体制が整えられているようです。

……とはいえ、それで十分かどうかはわかりませんが。

近年は外国からの観光客もますます増え、文化財の損傷や劣化がさらに進んでしまう

場面もあるのでは、そんな懸念も感じてしまいます。

「今日も職人たちは清水坂に行っているよ」

清水坂の古い町屋が立ち並ぶ中の土産物屋の改修現場で

外壁はしっくい城壁、内壁は黒しっくい鏝斑仕上だそうです。

そう教えてくれたのは村上さん。

私は思わず尋ねました。

「もし、左官職人になりたい人がいたら、どうすればいいですか?」

すると村上さんはこう答えました。

「静岡といえば、“あの”シックイの名人、江戸から明治にかけて活躍した左官職人・入江長八のふるさとじゃないか。

修行の場なら、きっといくらでもあるでは」

伊豆の長八美術館

伝統の左官技術を全身で感じる美術館『伊豆の長八美術館』|おでかけ|カラーズ

と返されました。

「そこでは、長八が極めた左官技術を感じることができますよ」

そう言われて、思い出しました。

長八のふるさと・松崎にはご縁があって、これまでにも何度か足を運んできました。

確かに。左官の本場かも。もっと地元にも目を向けなくては。

 

今日、市役所へ用事があり出かけました。

正面玄関を入ると左側に3階まで続く階段があります。

その階段の側面は、グリーンの壁です。

ふと足を止めて、階段の壁を改めて眺めました。

島田はお茶の産地。

そのお茶の葉を粉末にして混ぜ込んだ素材を、特殊なコテで丁寧に塗り上げた左官の壁です。

藤枝の村松左官さんが仕上げた壁です。

長八が残したような、芸術性の高い左官技術とはまた異なりますが、

ここにも「今」という時代に根差した、新たな左官の技を感じました。

ただ、そんな職人の道に入るには

「技への憧れ」だけでは、入り口はあまりにも狭いのかもしれません。

日々、安定した暮らしがあること。支えてくれる人がいて、やりがいのある仕事があること。

そして、感謝し、感謝される関係があること。

それが伝わること。

日々流す汗は、夢の実現に向かうための扉を開くもの。

この壁を前にして、思わず1人うなづいてしまいました。

多様な入り口と、働きながら学べる場をつくること。

「最近は、一度社会に出てから職人の道を選ぶ人が多いよ」

と村上さん。

その言葉に、ふっと胸を突かれる思いがしました。

あえて親から子への継承にこだわらなくてもいいのでは、

そんな含みを感じたのです。

でもそれは、決して継承の否定ではなく、

“多様な入り口”と“学び続けられる場”の必要性を伝える言葉でもありました。

血縁に限らず、志がつながっていく時代へ。

その思いは共有されている。会話の中でそう思いました。

17:00、「地下鉄の駅のほうが近いですよ」と案内していただき、小雨のなか駅へ向かいました。

帰りの新幹線で考えました。

多様な入り口と、働きながら学べる場をつくること。

それこそが、この活動の本当の目的なのかもしれない。

そんな言葉を、頭の中で繰り返し、自分に言い聞かせていました。

 

荒壁パネルのことはまた別の機会にしたいと思います。