2026年08月21日
職人さんの仕事とボランティアさんの仕事
「職人さんが、すぐに仕事を始められるように」
能登へボランティアに出かけたとき、現場で説明を受けながら聞いた言葉を、今でも思い出します。
「職人さんが、すぐに仕事を始められるようにしましょう」
地震や水害などの自然災害が起きると、被災地には多くのボランティアが入ります。
その活動は、片付けや清掃、物資の運搬など、多岐にわたります。
熊本の被災地にも、全国から多くのボランティアの方々が入り、さまざまな活動をされていることが伝わってきます。
以前、水害に見舞われた住宅で、ボランティア活動に参加したことがあります。
被災された方の状況や要望を伺いながら、作業する場所や内容を分担していきました。
私たち数人が担当したのは、和室まわりの清掃です。
床上50センチほどまで泥水に浸かり、畳を上げ、さらにその下の荒床板を外すと、床下にはまだ湿った土が残っていました。
床組の木材には泥が付着し、そのまま乾いた状態になっています。
私たちの作業は、木部を中心にブラシで泥を落としていくことでした。
そのとき、現場で言われたのが、
「このあと修理に入る職人さんが、スムーズに仕事を始められるように、泥をきれいに取りましょう」
という言葉でした。
それが、私たちの作業の心得になりました。
ボランティアには、危険を伴う作業や専門的な判断はできません。
だからこそ、私たちにできることをする。
片付け、清掃、運搬などを行い、次に入る職人さんへ、仕事をしやすい状態でバトンを渡す。
そんな役割なのだと思いました。
今、地域の職人さんが少なくなっています。
被災地では、一日も早く住まいを修復し、被災された方が日常の暮らしを取り戻せるように、多くの修理や復旧を、限られた職人さんたちで進めなければなりません。
そう考えると、ボランティアの方々が行う片付けや清掃は、次に入る職人さんへ仕事をつなぎ、復旧を一歩前へ進める、大切な役割なのだと思います。
職人さんが本来の仕事に集中できる環境を整えることは、復旧を早めることにもつながります。
工期を短くすることや、修理にかかる費用の負担を少しでも軽くすることにもつながるのだと思います。
一方で、災害復旧を考えると、もう一つ気になることがあります。
それは、「どこに相談すればいいのか」ということです。
特に高齢の方にとって、ボランティアの依頼や支援情報がデジタル中心になると、情報にたどり着くことそのものが難しくなる場合があります。
一人暮らしの方であれば、なおさらです。
そして、地域の職人さんが少なくなり、その存在が見えにくくなっている今、
「家が壊れたとき、誰に相談すればいいのだろう」
という問題は、災害が起きたときだけの問題ではなくなっているように思います。
どこに、誰に相談すればいいのか。
誰が修理をしてくれるのか。
その情報を、どうすれば必要な人に届けられるのか。
これは、これからの地域にとって大きなテーマになっているのだと思います。
だからこそ、地域の中で情報を共有する。
情報が届きにくい人には、地域の誰かが伝える。
困っている人と、支援できる人、そして職人さんをつなぐ。
災害の復旧には、専門家の力が欠かせません。
けれど、その専門家が力を発揮するためには、その前後を支える人たちの存在も必要です。
「職人さんが、すぐに仕事を始められるようにする」
能登で聞いたこの言葉は、災害ボランティアの心得であると同時に、これから職人さんが少なくなっていく地域で、私たちにできることを考えるきっかけにもなるように思います。
職人さんが減っていく時代だからこそ、
地域の力で職人さんの仕事を支え、地域の暮らしを守っていく。
そのために、日頃から人と人がつながり、情報を共有しておく。
やっぱり最後に大切なのは、
地域で支え合うことなのだと思うのです。