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2026年03月17日NEW

この人から買いたいと思った日

この人から買いたいと思った日

テレビの具合が悪くなったので、電気ショップへ見に行きました。

店内を見ていると、少し離れたところに同じ世代くらいの店員さんが立っていました。
見た目は七十代を少し過ぎたくらいに見える方でした。

こちらの様子を見て、「何か探していそうだな」と思っているような気配です。
声をかけようかどうか、少し迷っている様子でもありました。
そしてこちらも、「まだ声をかけられたくないな」と思いながら商品を見ていました。

そんな、少し距離のある時間が流れていましたが、やがて私から声をかけました。

話してみると、すぐに耳が少し遠いのかなということが分かりました。
私の問いかけに対して、反応が少し弱いときがあるのです。
もっとも、それは人ごととは言えません。
私自身も耳がだいぶ遠くなってきて、聞き取れなかったときに、
つい聞いたような顔をしてごまかすことがありますから。(笑)

そんな話をしているとき、私は自分も耳が遠くなってきていることを伝えました。
すると店員さんは、店内に並んでいるテレビを指しながら、
テレビのスピーカーの付き方を説明してくれました。
テレビによって、スピーカーが下向きについているものと、
前向きについているものがあるそうです。
それぞれ音の広がり方にも特徴があるのだとか。

そして私にこう言ってくれました。
「耳が遠くなっているのであれば、
前向きについているものの方が聞き取りやすいかもしれませんね。」

そのとき私は、この人はただ商品を説明しているのではなく、
私のことを考えて教えてくれているのだなと感じました。
ところが、話してみると印象はすぐに変わりました。
商品知識がとても豊富なのです。

テレビのことだけでなく、ついでに調子が悪くなっているコピー機のことも聞いてみました。
機種番号とメーカー名を伝えると、「その品番はこのメーカーですね」と、
あいまいな私の記憶をやさしく補ってくれます。
そして「一度こうしてみてはどうでしょう」と、
メンテナンスの方法まで丁寧に説明してくれました。

コピー機のインクを買おうとすると、
「もし本体が壊れていたら買い替えになるかもしれません。
そのとき、このインクが次の機種で使えるかどうかも確認した方がいいですね」と、
インクの特徴まで教えてくれました。

このお店ではこれまでにも何度か電化製品を買っています。
対応はさまざまで、商品知識があいまいだなと感じたこともあり、
対応に少しつれなく感じたこともありました。

けれど、商品の入れ替わりは早く、人手不足の時代でもあります。
いまはどこもそのような悩みの中にある、とどこかでそう納得していたのです。

それでも、その日あらためて感じたことがあります。
人は年齢や見た目だけでは測れない、ということです。

本来は店員さんがお客様に安心してもらうものかもしれません。
けれど、その日はなぜか、こちらも信頼されているような気持ちになりました。

耳は少し遠いのかもしれません。
でも、商品知識は豊富で、お客様のことをよく考えてくれる。
そんな店員さんと話しているうちに、
気づけば私の中に、ひとつの気持ちが生まれていました。

「この人から買いたい。」

その日、私はテレビを一台買いました。
この人から買いたい。 そう思えることが、なんだかうれしい日でした。

レジで会計を済ませたあと、できればあの店員さんに
もう一度声をかけて帰りたいと思っていました。
「ありがとうございました」と、一言お礼を言いたかったのです。
けれど、その姿はもう店内のどこに移動され見当たりませんでした。

同じ世代の人が誠実に働いている姿に出会えたことが、

その日、なんだか励まされるような出来事でした。

そしてふと思いました。

信頼され、信頼する。

職人さんたちも
きっと同じなんですね。

(3) Instagram

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