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2025年12月08日

民間の職業訓練所という“人が育つ場所”

榛南建築高等職業訓練校訪問記

榛南建築高等職業訓練校のHPのコピーから

榛南建築高等職業訓練校は、「豊かな教養と技能を備えた、有能な技能労働者を育成する」目的で、県知事の認定を受け、昭和45年に榛南建築工業組合が設置した職業訓練校です。 

榛南建築工業組合に所属する事業主と雇用契約を結んだ従業員が、働きながら訓練校に通い、職業訓練を受けます。昨今では他の職業に就いていても、助成金は出ませんが職業訓練を受けることが出来るようになりました。国で定めた基準で実施されますので、働きながら職業に必要な基礎的な知識や技能をしっかりと身につけたい方には、格好の職業能力開発施設といえます。

 ・ 実技・学科が一体となった訓練により、基礎から高度な技能まで習得できます。

・ 指導は、経験豊かな指導員が、訓練生の個性に配慮し、きめ細かく行っています。

・ 修了生は各事業所で勉強を重ねた後、一人立ちし、独立して活躍しています。

職業訓練法人とは

共同して認定職業訓練を行う団体(社団または財団)に、その実施する訓練の拡充・向上と、永続性のある健全な運営がなされるよう、職業能力開発促進法により法人格を認めています。

職業訓練法人の中心的な業務は、認定職業訓練の実施であるため、認定訓練助成事業費補助金等の援助があるほか、税法上公益を目的とする法人として各種の減免措置が図られています。(※ここまでHP抜粋)

 

訪問させていただいたのは木曜日、私が工業高校時代の先生が学科の指導をされていると知り、見学をお願いしました。

この日は大工実技の実習の日でした。7人の訓練生で内3人が女性の方でした。

ノミをたたく音がいい感じです。

講師は現役で活躍する熟練の大工さんで、加工の技術だけでなく、職人の歴史や文化にも自然と触れさせてくれる、とても頼れる存在の方でした。

先ず、第一印象です。

地域に根差した大工さんの育成を地道に続けている大事な場所だと感じたことでした。

ここはポリテクセンターのような大きな施設ではありませんが、少人数でじっくり学ぶにはこのぐらいの規模がいいようにも思います。

 

民間の職業訓練所という“人が育つ場所”

かつて、地域各所には民間の職業訓練所があって私と同年代の大工さんは訓練所に通われていた方も多いです。
地域の職業訓練所は、その数が減る中でも榛南建築高等職業訓練校のような場所は、ものづくりに惹かれる人が気軽に学べる、そんな身近な入口だと思いました。
でも、訓練所で学び人の数は減っていると聞きます。進学の一般化や職業の多様化など各地に訓練所が出来た時代とは大きく変わったからでしょうか。

ここでまた大きな変化が訪れています。日々、目に耳にAIの文字が増えていきます。AIが働く環境を大きく変える言われる中、人が介在するものづくりの価値が再発見されようとしています。

ものづくりの基本を学ぶ訓練所は、むしろこれからの日本にとって必要不可欠な場所になっていくのではないかと思います。

 

働きながらでも、人生の途中からでも学べる場所

民間の訓練所の大きな魅力に、仕事を続けながら学べることがあります。

大工(建築)技術の基礎を学びたい人、社会に出てから「本当にやりたいことに挑戦したい」と思う人、リタイア後に「もう一度自分を磨きたい」と感じる人
どんなタイミングでも、受け入れてくれて新しい一歩を踏み出せるチャンスをもらえます。

訪問した時も、年齢幅がある方が実習していました。若い人も、年齢を重ねた人も、それぞれの背景を抱えながら同じ目標に向かう環境は、世代の違いは壁ではなく、むしろ強みとなり、経験と視点の幅が学びを豊かにしてくれるような気がします。

週1回、3年間。同年代が集まる学校と違ってこの訓練所に通う年月は、人生についても学び考える時間になるんだと感じました。そのためには、訓練生が増えてほしいと願います。

 

技術を習う場所であると同時に、“自分を知る場所”でもある

訓練所は、ただ技術を覚えるためだけの場所ではなく、交流の場でもありました。実習中の会話は禁止ではなく、お互いが自由に声を掛け合うことが出来ます。きっと、お互いの道具の話もしているように思います。

「砥石何使っている?」なんても。

働く楽しさ、時には厳しさ、そして自分の得意や強みと向き合い悩む時、ここで少し話してみる。

手を動かし、仲間と励まし合い、試行錯誤を重ねる中で、「自分に向いていること」「自分が好きなこと」が見えてくる。

そんな自己発見の場所と時間を作ってくれているんだなと感じました。

 

背中から学ぶことと、寄り添って教わることが両立する場

ものづくりの世界には「背中を見て学ぶ」という文化があります。
でも今は、それだけでは若者に届かない、嫌われる時代であることはみんな知っています。

見学する中で訓練所には、手取り足取り、一緒に悩んでくれる距離の近さがあると思いました。
できなくても叱られるのではなく、改善の道を共に探してくれる。

自分を磨くためには甘えたくないという気持ちもある中で、寄り添って教わる安心感は今の若者に支持されると思います。

 

良き指導者の存在と、未来に向けた指導者の発掘

技術の基本だけではなく、価値観、経験、人間力までも教えてくれる指導者の存在はとても大きいものです。榛原職業訓練所でお会いした講師の大工さんは、現役で活躍する熟練の大工さんで、加工の技術だけでなく、職人の歴史や文化にも自然と触れさせてくれる、とても頼れる存在に感じました。

見ず知らずの私にも大工の技術を語り体験もさせてくれました。玄翁や差し金の話も面白かったです。ありがとうございました。

しかし、今後、伝統的な技能を持つ指導者を地方で確保するのは難しいという課題もあるのかなあとも思いました。

時には人生の相談まで応えてくれる「人としての厚みとあたたかさ」を持った指導者は、学ぶ人の背中をそっと押してくれますね。まさに、民間訓練所はそのような方々で支えられているからこそ続いているのだと思います。

 

民間でありながら、公的支援と産官連携で成り立つ場

民間の訓練所は地域の事業所や行政が協力しあって運営しています。

そして多くの訓練所は、産官の連携によって地域の人材育成を担う公的性格を持った存在
だと思います。企業・行政・地域が協力して、学びたい人をサポートし育てていく。人や技術を未来へつなぐ仕組みが揃っていることを知ってもらいたいと話されていました。

職人さん育成は、大企業や職人さん紹介ポータルサイトの会社などで積極的に行われています。でも、ここで感じたアットホームの感覚は得られないのかもしれません。

 

人の手の価値に立ち返る時代

AIが進化し、自動化が進む現代。
それでも、手仕事の繊細さや、素材への感覚、経験からくる判断は、人にしか生み出せません。

だからこそ、ものづくりは、人の手の価値に立ち返る時代に入っていると感じます。

地域の民間の訓練所は、その原点に触れ、人を育てる大切な場所。
規模は大きくなくても、未来の人と技術を支える大きな力を秘めていると感じた訪問でした。

最後に、カンナで削ったヒノキを持ち帰ろうと集めていると、ある訓練生がそっと「これに入れたら」と袋をくれました。

このようなやさしく気配りし、そして技術もある職人さんがここで訓練されている。訓練日以外は現場で仕事に励んでいます。働きながら学ぶ、そこには経営者、親方の理解や思いやりがあり、それに応えようとする訓練生がいる。

とても心が温かくなりました。

帰る道すがら見えてくる9月5日の竜巻で被災された家々。連なる足場が痛々しい。職人さんたちが間に合わない。

職人さんたちがいるから災害復旧が進む。みんなで職人さんたちと支え、職人さんがみんなを支える。これが災害に強い地域社会をつくることになっていく、そう強く思います。

最初に作るのは、自分の道具箱。これはずっと前から変わらない実技訓練のスタートです。
4月から新しい期は始まります。申し込みはそれまでに。
★ ps。
訓練生が小さな小屋を実習を兼ねて作ってくれるそうです。
木の自転車置き場もいいですね。
材料費は負担しなければなりませんが、いかがでしょうか。